入江宏幸行政書士事務所
HOME 行政書士とは 行政書士Q&A プロフィール リンク
行政書士Q&A
Q&A


Q.01 『委任契約』について
 

私が事業の資金繰りで困っているのを見て、友人が私の家を担保に銀行からお金を借りてきてやると言ってくれましたので、私は友人に実印と権利証と白紙委任状を渡しました。ところが、友人は、お金を借りてきてくれたのですが、貸主は銀行ではなく、高利貸から借りてきてしまいました。この金銭消費貸借を無効とすることはできませんか。

A

委任状には、いろいろな内容のものがありますが、誰が誰にどのような内容のものを委任するか正確に記載することが重要です。

1.あなたが友人に、銀行からお金の借入を依頼した行為は、金銭消費貸借という事務を委任したことになります。そして、あなたと友人の間にの委任契約には、友人を代理人とする、という内容が含まれています。

ここで、委任と代理について簡単に述べておきます。委任は、「当事者の一方が法律行為をなすことを相手方に委託し、相手方がこれを受諾するに因りて其効力を生ず」る契約であると規定されています(民法第643条)。これに対し、代理は代理人に対し、代理人の行為によって本人に権利変動を生じさせる地位を付与することを内容とする委任類似の無名契約と考えられます。このように委任と代理は別個独立の概念ではありますが、委任と同時に代理権の授与がなされることは何ら妨げられるものではないといえます。

2.ご質問の委任の内容を考えてみますと、何何銀行から不動産を担保として金を借入するということになります。友人はあなたの代理人として、金を貸す人と交渉し、金銭消費賃貸と抵当権設定契約を締結し、借入金を受領する権限があります。

3.ご質問においては、あなたが友人に委任した内容と、実際に締結された金銭勝訴貸借が食い違っているのは、契約の当事者が銀行ではなく、高利貸であったという点です。あなたが、高利貸と契約はしたくないということですから、契約は無効だと主張するのは当然です。

4.しかし、逆に、高利貸側から見た場合も検討してみる必要があります。民法は、「第三者に対して他人に代理権を与えたる旨を表示したる者は其代理権の範囲内において其他人と第三者との間になしたる行為に付き其責めに任ず」(民法第109条)という表見代理を規定しています。ここで、「第三者」である高利貸は当然、善意無過失が要件となり、もし、友人と高利貸との間で、委任の内容がよく話し合われ、委任の内容が銀行からの借入であるということを承知のうえで高利貸が金を貸したとかの場合は、あなたは、その金銭消費貸借の無効を主張しうることになります。この善意無過失の要件は、民法第110条、第112条の表見代理については、明文上明らかであるのに対し、第109条には明文規定がありませんが、表見代理制度が善意無過失の相手方を保護する制度であること、また判例も同様に解している(最判、昭41.4.22、民集20.4.752)ことから、第109条においても善意無過失が要件となっているものと解せます。

5.ご質問について考えますと、友人を代理人として締結されたあなたと高利貸との金銭消費貸借契約は表見代理が成立して有効と考えられますが、友人の行為は、代理権限の範囲を越え、委任の趣旨に反して、あなたに損害を与えたことになりますから、これは、あなたが、その友人に対し、損害賠償の請求をすることは可能です(民法第709条)。

今後このような場合には、実印、権利証はあなたがしっかり持っていて、委任状に付いては、受任者の名前及び委任内容をできるだけ詳細に明記したうえで、あなたの印を押す慎重さが必要です。白紙委任状は絶対に避けるべきです。


Q.02. 『連帯保証契約の相続』について
 

父は友人の借金500万円について、銀行に連帯保証をしていました。その後、父が死亡し、母と私とで2分の1ずつ遺産を相続しました。母と私は、父の500万円の連帯保証債務を負わなければならないのでしょうか。

A

1.相続人は相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利・義務を承継します(民法第896条本文)。

しかし、例外として、「被相続人の一身に専属したもの」は承継されないとされています(民法第896条但書)。一身に専属したものとは、とくに被相続人個人に着眼した法律関係で、被相続人以外の者に帰属することが認められないものとの意味です。

このような法文に基づいて、判例、通説は、保証債務のうち、金銭債務についての保証のような一時的保証と、金融取引に対する保証のような継続的保証とを区別し、一時的保証については相続性を認め、継続保証については画一的に処理せず、相続を認めたり否定したりしています。

2.次に連帯保証債務の性質について考えてみます。

連帯保証債務とは、保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担し、主たる債務と保証債務とが連帯関係に立つ多数当事者の債務関係です。ここにあげる連帯関係に立つ債務とは、数人の債務者が同一内容の給付について各自が独立に全部の給付をなすべき債務を負担し、しかもそのうち1人の給付があれば、他の債務者も債務を免れることをいいます。

単なる保証人との場合には、保証人が債務者から支払を請求されたときは、まず主債務者に請求するように言える、催告の抗弁権があります(民法第452条本文)。

また、主債務者に充分な財産があるときは、まず主債務者から取り立ててもらいたいと言うことが出来る、検索の抗弁権があります(民法第453条)。

さらに、主たる債務者に対して複数の保証人がいる場合、各保証人は原則として、主債務者の額を平等の割合で分割した額についてだけ保証債務を負担すればよいものとされる分別の利益があります(民法第456条)。

しかし、連帯保証人には、以上述べた催告の抗弁権、検索の抗弁権、さらに分別の利益もありません。

したがって、債権者から連帯保証人が請求を受けたときは、ただちに全額を支払わなければならないことから、連帯保証は、一般の保証よりかなりその責任が重いことになります。

3.このような、連帯保証債務が共同相続された点について、検討してみます。

連帯保証債務の相続についての直接の最高裁判例はありませんが、連帯債務の相続については、「各共同相続人は、その相続分の範囲内において主債務者と連帯関係を持つ」としています(最判、昭34.6.19、民集13.6757)。

この判例の立場からご質問について考えますと、あなたとお母さんは、銀行に対し、各々の相続分である250万円ずつの債務を負担し、相続財産に対する共有部分を含めた各固有財産をもって責任を負うことになると考えられます。


Q.03 『未成年の婚姻に対する同意』について
 

私(満18歳)の父母は、私の親権者を父と定めて2年前に離婚しました。この春、私が結婚したいと考えていたところ、その後再婚した母は賛成してくれているのですが、同居の父は猛反対で、「未成年者の結婚は、親の同意がなければできない。」と行って私たちの結婚を許してくれません。この場合、私は父を説き伏せなければならないのですか、それとも母親だけの同意でも良いのですか。

A

民法第737条第1項には、未成年の子が婚姻するには、父母の同意を得なければならないとあります。つまり原則は父母両方の同意が必要なわけです。ただ、第2項には、父母の一方が同意しないときは、もう一方の同意だけで足り、また、父母のうち一方の行方の知れないとき、死亡していないとき、何らかの理由でその意思を表示できないときもまた片方の同意だけで足りるとしています。

具体的な届出の方法としては、戸籍法第38条第1項に、同意の必要な場合の婚姻届の規定をしています。同意書等を添付するか、婚姻届にその旨を附記し、署名捺印すればよいとしています。

この届出のとき未成年者は、父母の一方が不同意であるとか、行方不明であるとかの理由を述べることはないと解されています(ただし、窓口実務では、できるだけその理由を備考欄に書き込ませるようにしているようですが)。それどころか、父母の両方が行方不明等であって、事実上の同意が得られないようなときには、同意は要らないといえます。

なぜなら、この同意を要する規定は、思慮の十分熟していない未成年者の婚姻に、補佐的な同意権者をつけるべきであるとする趣旨であって、それも相談すべき父母が傍らにいればという前提の規定だからです。つまり、いるならば親に相談すべきであって、父母がいない場合に特別に後見人を選任したり、家庭裁判所の許可を得たりという手続きは一切不要なわけです。

ですから、父母の一方だけの同意で足りるという第737条第2項前段の規定は、あたかも、父母が離婚しその一方が身近にいたい場合に、他の一方だけの同意だけで足りるとした規定のようですが、この一方の同意権者を、「親権者」「監護者」等の資格を付けていないところから、実は父母のどちらの一方でも良いということになります。

つまり、あなたの場合には親権者でも監護者でもない母が同意し、届出書にその旨を書き込み、書名捺印すれば、婚姻届は受理されるということです。

最後に、同意が必要にもかかわらず同意のない婚姻届は受理されません(第740条)が、同意のない婚姻届が過って受理されてしまった場合、また、このような婚姻届が受理された後、一定の者から取り消されるかについて説明します。

婚姻届は出生届などとは違い、届け出ることで婚姻の効力が生ずる創設的届出です。そして、第743条、744条による取り消しの規定にこの第737条が含まれていないことから、いったん受理さえされれば完全な婚姻届としてその婚姻が成立し、また成人の擬制(第753条)等の効果も当然に生じます。


Q.04 『夫婦間の契約の取り消し』について
 

最近夫婦喧嘩も絶えず、このまま夫婦生活を続けていくのが耐えられない状態でしたので、夫と協議した結果、夫名義になっている家屋敷それに預金の全てを私に贈与するという契約書を交わした上で、これを条件に離婚届に署名、捺印しました。ところが夫は、この離婚届を出す前に、婚姻中の夫婦間の契約はいつでも取り消すことが出来るとの理由でこの贈与を取り消してしまいました。私としてはどうしても納得できないのですが。

A

民法第754条には、『夫婦間で契約したときは、その契約は、婚姻中、何時でも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。』とあり、その意味は読んで字の如くです。

また、これは書面によらない贈与の取消権(第550条)と異なり、契約の履行前のみではなく、履行後においても、また一部を履行した場合には、その履行部分について取り消せます。

そこでこの取消の効果が絶対的であると第三所得者に不測の損害を与えることになるので、この取り消しをもって第三者に対抗できない(同条但書)こととしています。そして、ちなみにこの第三者の善意悪意は問わないとされています。

一方、この条文を規定したのには2つの趣旨があるといわれています。

一つには、夫婦間の契約そのものは、往々にして威力のある夫側(今は妻の方かも知れませんが)が無理強いした契約であったり、また反対に、溺愛のすえ無理な契約をしてしまったりと、いわゆる平等な立場での契約が成り立っていないこと、今一つは、夫婦間の約束事にまで裁判所の力が介入すべきではないというものです。

ただ、前者について言えば、そもそも協力扶助の義務関係にある夫婦間の契約が、一般の契約と本質的に違うという考えから「取り消せる」と規定したわけでしょうが、ならば、単に履行の強制までは主張できない自然債務とすれば足りること、また後者についても、円満な夫婦を想定し、裁判所の介入を不適と考えた場面では、契約の撤回もまた夫婦の合意によって円満に解決されるのが普通であって、そうだとするとこの当たり前の規定をした本条は無意味であるとの考えに行き着くわけです。

判例でも、「民法第754条にいう、『婚姻中』とは、単に形式的に婚姻が継続していることではなくて、形式的にも、実質的にもそれが継続していることをいうものと解するべきであるから、婚姻が実質的に破綻している場合には・・・・・夫婦間の契約を取り消すことは許されない。(最判、昭42.2.2・民集21巻1号8頁)」とあり、さらに、この夫婦間での契約と取り消しを、その契約と取り消しの時に分けて考えると、まず正常な婚姻中に契約をし、正常なときに取消をする場合、正常なときに契約したが破綻してから取り消した場合、たま、破綻しているときに契約したが正常に戻ってから取り消した場合、破綻しているときに契約しやはり破綻しているときに取り消す場合の4つの形態に分類できます。

そして、現在本条の適用があるのは一番始めの場合(学説・判例)だけとされ、またこのときには法律上の争いは存在しませんで、結局本条の適用になることはなく、もはや本条の実質的な存在理由はないと考えて差し支えありません。

よって、あなたの場合ももちろん本条の適用はなく、破綻状態でした契約はもはや取り消せないと考えられます。


Q.05 『嫡出性の推定とその否認』について
 

現在の夫(乙)との間に子供(甲)がいますが、実はこの子甲は前夫(丙)との婚姻中にできた乙との子なのです。その当時、丙とは同居こそしていましたが仲が悪く、私が乙の子甲を妊娠していることが知れるところとなり、それが原因で離婚しました。

私は、丙と離婚後間もなく甲を出産、その後すぐに乙と婚姻(第733条第2項)しました。当然丙も、子甲が自分の子ではないことは知っているのに、敢えてそれを否定しないので、子甲の未分は丙との婚姻中にできた子だとして、丙が父、私が母として戸籍に記載されています(戸籍法第52,53条)。

しかし、本当の父は現在の夫である乙なのですから、私としては子甲を私と乙との子として戸籍に載せたいのですができないでしょうか。

A

民法第772条により、妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定されます(第1項)。また婚姻成立の日から200日以後または婚姻の解消もしくは取り消しの日から300日以内に産まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定されます(同条第2項)。あなたは丙と離婚後間もなく甲を出産しましたが、第772条第2項の規定により婚姻中に懐胎した子との推定(嫡出性の推定)を受け、さらに第1項の規定により甲は丙の子(父性の推定)であると推定を受けたわけです。

ただ、この規定は推定ですから、客観的に見て丙の子ではないという事実があればこの推定を受けない場合もあります。

夫が何年間も海外出張をしていたにもかかわらず、妻が懐胎したような場合がそれで、いくら法律上の婚姻関係にあるといっても嫡出推定の通用は受けません(通説・最判、昭44.5.29)。

ただ、あなたの場合は仲が悪くても同居していたわけですし、前述のような客観的な事実もなく、甲が丙の子という可能性もあるわけです。ですから、まず前夫の丙から甲または母たるあなたに対し、甲の嫡出否認の訴を提起してもらうしか方法はありません(第774,775条)。

そして、嫡出否認が確定してはじめて、本当の父である乙が甲を認知(第779条)することもできますし、第789条の準正という規定(この場合は第2項の認知準正にあたる)により、甲が現在のあなた方夫婦(乙が夫)の子として嫡出子たる身分を取得することになります。

ただ、問題なのは、前述のとおり現行民法の規定では、嫡出否認を主張できるのが夫だけだということです。つまり丙が甲の嫡出の否認をしてくれない限り乙が認知することも、よって準正ということもなく、残念ながら甲を乙の子として扱うことはできません。

それどころか、否認の訴は丙が甲の出生を知ってから1年以内に提起しなければならないこと(第777条)や、丙があらためて甲を嫡出であると承認してしまったら、もはやその否認はできないこと(第776条)も知っておかなくてはいけません。

子が第772条の嫡出の推定を受けない場合であれば、夫からの否認の訴を待たずして、子の側から父に対して認知の訴を提起することができるという判例はありますが、これも嫡出の推定を受けない場合に、なるべく早く父を確定しようとするものですから、あなたの場合には当てはまらず、やはり丙からの嫡出否認の訴を待つしかありません。


Q.06 『再婚禁止期間の適用除外』について
 

私が再婚しようとしたところ、女性の場合、前婚の解消後6か月経たなければ再婚できないと言われました。

聞くところによると、産まれた子供の父親を定めるのに支障があるためらしいのですが、でしたら私の場合など離婚届を提出するずっと以前から現在の夫(内縁の夫)と同居していますし、現在妊娠していないことも証明できます。それに、これだけの理由からだけでしたら6ヶ月もの長い待婚期間は不必要でしょうし、そもそも同居している私たちにとっては無意味です。

もっとも、子供を出産してしまえばこの規定の適用はなくなるそうですが、妊娠していない私にはこれも無理ですし、外に例外はないのですか。

A

民法第733条第1項に、「女性は、前婚の解消または取消の日から6箇月を経過した後でなければ、再婚することができない。」という女性にのみ再婚禁止期間の規定があります。以前は、「貞女二夫にまみれず」という儒教的道徳観から来ていた規定といわれますが、少なくとも現在は、もっぱら父性推定のための規定となっています。

ではなぜこの期間を6箇月にしたかというと、確かに立法の時点でも根拠はなかったようです。父性の推定だけを捉えれば、第772条で重複する100日乃至101日とすべきであったのですが、どうやら主な諸外国の立法例である300日より少し短め(旧民法草案では4箇月だったので)ということで6箇月にしたようです。

この辺のところやこの規定そのものの廃止については、以前から議論されているところだったのですが、折りしも平成3年11月28日広島高裁で判決がありました。多くの部分(この期間の問題の外、命題でも取り上げたいくつかの矛盾点についても)で一応は理解を示しているにも拘らず、第772条により導かれる100日(又は101日)では、一般人の目からは懐胎の有無を確実に知りがたいこと、医学の進歩にともない200日未満で出産することや逆に300日を越えて生まれることもあり、無用な争いを避けるという意味では、民法の予想する懐胎期間もあながちはずれてはいないと述べ、この6箇月についても妥当としています。

一方、懐胎中の女性であっても出産後は再婚できるという第2項の規定以外の類推適用ですが、まず認められるのは、離婚後同じ男性と再婚する場合です。父性推定の重複は起こり得ないという理由からです(大1.11.25民事708号回答)。また同じ理由から、民法第770条第1項第3号により、夫が三年以上不明であるとして前婚の離婚判決を得た場合です。

さて、問題となるのは再婚の際懐胎していないことの医師の証明書が提出される場合です。待婚不要との説もありますが、現行戸籍法では、いわゆる形式審査主義が採られているため、戸籍官吏が再婚しようとする女性が懐胎しているかどうかの審査ができない以上、医師の証明書等に頼らざるを得ません。しかしその場合に、単なるこれら証明書だけで良いかということになりますと、それは立法論として検討されなければならない(現行法の解釈としては無理)として、戸籍実務においては第1項の適用除外とは認められず受理されません(昭25.1.6、民甲2号回答)。

よって、あなたの場合もやはり例外はなく、離婚届けの提出から規定どおりの6箇月をおいて次の再婚の手続きを執るしかありません。


Q.07 『推定を受けない嫡出子』について
 

私は、半年前に乙と結婚式を挙げ、そのまま同居生活に入り、その1か月後に婚姻届を提出、その5か月後に子甲が生まれました。しかし、私は乙と結婚する直前まで丙とつきあっていて、甲は丙との間にできた子に間違いありません。また、乙も甲の出生に疑問を持ち、その出生届を出さなかったので、私も甲が乙との子ではないことを認め、乙と協議離婚したうえで、甲を私の非嫡出子として届け出ました。そこで私は、父たる丙に対し甲を認知するよう求めているのですが、逆に丙は、乙との婚姻中に生まれた子甲は嫡出子としての推定を受け、かつその嫡出否認の提起期間である1年を経過し、もはや乙の嫡出性は確定しており、いまさら認知の請求はできないと主張しますが、いかがでしょうか。

A

民法は、嫡出子の意義や要件について規定をせず、嫡出否認の訴を前提として嫡出性を推定しています。

ですから、この嫡出推定の適用を緩和することで、より多くの場合に真実の父子関係の推定がスムーズに機能しその確定にも役立つことでしょう。ただその反面、もし事実に反した嫡出推定を受けたとき、その父が嫡出否認の手続きを執らない限り、この真実のない身分関係が確定してしまうという重大な危険があります。

嫡出推定の規定と嫡出否認制度が、この父性の確定という大きな使命を担っているのは確かですが、ただそれは単なるそれだけではなく、家庭の平和の維持というもうひとつの柱があります。そのために良識的な結果を推定し、不要な争いを避ける工夫がなされているのです。

ただ、これら不十分な規定に対し、第772条第2項にいう「結婚成立の日」を、単に婚姻届を出した日だけを指すのではなく、あえて「内縁成立の日」をも含めて実質的に捉えようとする説があります。内縁が先行するような多くの場合に嫡出推定の適用範囲を緩和しようとするものですが、その起算点はやはり不明確ですから、根本的な解決にはなりません。

また、その他多数説としては、これら内縁を保護するのではなく、推定の要件を緩和しようとするものがあります。嫡出否認の提起の起算を「嫡出すべき出生を知った時」と改正する説や、形式だけ嫡出推定の規定にあてはまっても、事実上妻が夫の子を懐胎できない場合には、親子関係不存在確認の訴によるべきとしたり(制限説といい、その認定基準については争いはあるが現在の通説・判例)、或いは、既に家庭の平和を維持する必要のない破綻した家庭の場合には、推定の規定によらず、あくまでも血縁たる真実を追求してもかまわないというような数々の学説が唱えられています。

一方、現在の戸籍実務は、婚姻から生まれた子はすべて嫡出子として届け出ることになっています(大判、昭15.1.23を受けた、昭15.4.8、民甲第432号民事局長通達)。まず、嫡出子として届けられ、それが真実に反するときに、推定を受ける子は父が嫡出否認を主張し、推定を受けない子は親子関係不存在の訴によって争うこととしています。

このように、推定の範囲を厳格に解するのが、現在の判例(最判、昭41.2.15・民集20.2.202)であり、これを踏襲するならば、結婚成立の日(婚姻届受理の日)から200日以内に出生したあなたの子甲には、嫡出の推定は及ばず、よって乙からの嫡出否認の訴によることは許されませんので、丙に対し直接認知の請求を主張できます。


Q.08 『婚姻届提出時の婚姻意思の存在』について
 

私たちは、夫婦の名乗る姓の問題で親の反対を受け、事実上夫婦生活をしていたにも拘らず、婚姻届は出していませんでした。

ところが、先日(内縁の)夫が突然倒れ、病院に担ぎ込まれました。駆けつけた私に夫は、この際婚姻届を提出し正式に結婚しようと言い、私も考えた結果、夫の姓を名乗ることに決め、翌日私たち 2人の署名と夫の兄にの証人2人の署名を得て婚姻届が作成されました。

さてその翌朝、私たちから婚姻届の提出を委託された夫の兄が役所に赴き、午後 9時すぎに届は無事受理されたのですが、この日未明より夫の容体が急変し、午前10時30分亡くなってしまいました。

後日、この状況を知った夫の両親は、私が夫の財産をねらい、夫の意思によらず勝手に婚姻届を出したと次のように主張しますが、私たちの結婚は無効なのでしょうか。

     -----------------------------------------

〈以下、無効の主張〉

「婚姻届提出時と死亡時刻との間は僅か 1時間半であり、息子は婚姻届提出時既に瀕死の状態であったはず。よって、そのとき婚姻能力はもちろん、婚姻意思のないことは明らかであり、婚姻届提出時には婚姻意思は欠如しており、婚姻届は無効である。」

A

婚姻の届出を定めた民法第739条では婚姻が成立するために、「戸籍法の定めるところによる」届出と、届出が書面でないとされる場合には「署名」を要求しています。

ここで、いわゆる婚姻届がなされるには、まず、当事者の婚姻意思の合意(憲法第24条による結婚自由の原理)があり、この意思をお互いが婚姻届に署名して表し、それを提出し受理されるという経過をたどります。

余談ですが、こで署名について説明しますと、施行規則第62条に、届出人が署名捺印する場合に印を有しないときは署名だけで足り、書名することができないときは氏名を代筆させて印を押して足り、また、署名することも印も有しないときには氏名を代筆させてから拇印を押すだけで足りるとしています。

さて、問題はその署名された届が委託された第三者または当事者の一方によって提出されるときです。署名してから届までに一定の時間が生じます。

現在の判例通説では、届出は成立要件とされ、受理されることによって成立するという届出成立要件説を採用されています。つまり、婚姻意思の合意のみによって婚姻が成立し、届出は効力の発生要件とする効力発生要件説を否定しています。これによると、合意の時(婚姻届作成時)に婚姻意思があれば良く、提出時に婚姻意思や意思能力は必要ないという結果を導いてしまうからです。

さて当然のことながら、届には婚姻意思がなければならないのですが、この婚姻意思については、単に婚姻届出をしようとする意志だけでなく、「真に社会観念上夫婦であると認められる関係の認定を欲する効果意思(最二小判、昭44.10.31、民集23.10.1894)」も要るとするのが通説の立場です。

そして、この婚姻意思の存在時期ですが、成立要件説によれば、届出書作成の時と提出・受理の時の両方に存在しなければならず、 届書受理時の婚姻意思は有効要件となります。

ただ、届書作成の時から提出の時までに翻意するなど、婚姻の意思を失う特段の事情がない限り、つまり、積極的にその意思が確認されなくても、提出時に婚姻意思が存在すると解されます。よって、あなたの婚姻も有効に成立しています。


Q.09 『不受理申出制度』について
 

婚姻届作成の時に婚姻意思があり、かつ提出の時にも翻意するなど特段の事情がない限りにおいて、その届の受理された時に婚姻が成立するというのは解るのですが、合意し届が作成される時にくらべ、提出・受理の時の意思確認が積極的でないのですから、実際に翻意した場合の救済方法はあるのですか。

婚姻はまだしも、協議離婚のときなど、一方の配偶者が勢い余って自分で署名捺印した届を他の一方に渡し、後はその相手方に署名して出すよう言ったものの、その後本人が翻意したにもかかわらず、相手方は前述の届を補完し、提出・受理されるなどというケースもあると思うのですが。

A

届出をしてはじめて身分関係が成立するいわゆる創設的届出(婚姻届・協議離婚届・養子縁組・離婚届・任意認知届など)の場合、届書に署名捺印後翻意しても、それを積極的に表明しないことには、届書がいったん受理され、戸籍に記載されれば、これを無効とする確定判決(審判)がない限りその記載を消除することはできません。

そこで、合意後翻意した場合に届書を受理しないという形で対処している制度が、不受理申出制度とよばれるものです。

その起源は、協議離婚届書に署名捺印した妻が戸籍係員に対し、翻意したのでその届書を受理しないでほしい旨を表明した際に、「(受理機関たる)市長は、届書の内容を審査するまでもなく、(届時に意思を欠いた)無効な届として受理しないのが相当」と答えた昭和27年7月9日民事甲1012号民事局長回答にはじまります。

このように、法律上の根拠を持たない制度なのですが、解釈論と実務上の要請によってしだいに充実してきたものです。その後、つまり、夫婦の一方が知らない間に提出される恐れのある場合にも適用(これを予防的不受理といい、前者を翻意の不受理という)され、また、離婚以外の創設的届出、更には創設的性質を持つすべての届出(前述の一定の身分関係が形成される届のほか、入籍届、分籍届、婚姻関係終了届などの戸籍上の効力が発生する届)にも適用範囲が広がりました。

以上を含め、この制度を根本的に改善し整備したのが、昭和51年1月23日民二900号通達および同日民二901号依命通知です。

その他主な点としては、申出は書面で行うこと、申出人は申出の対象となる届の届出人となるべき者であること、申出人が申出受付日(郵送のときは到達日で、いずれも初日不参入)から6箇月を越えない期間を不受理期間と定められることなどが掲げられますが、最も注目されるのは、申出を本籍市区町村長に対して為すこととした点です。

これにより、非本籍地に出された申出もしかる後に本籍地に送付され、転籍しても残存不受理期間については申出による不受理の効力が付随するなど、それまでの問題がいくつか改善されました。

ただ反対に本来の届の側から見ると、届は従来どこの市区町村からでもできるわけですから、本籍地に出された届はその場で不受理申出の有無を確認して受理できるのに対し、非本籍地で受付けられ、本籍地に送付される届の法的解釈の問題が残されます。

このように、届が非本籍地に出された場合にも、届が受理により成立する(創設的届出は、戸籍に記載されなくとも受理により成立する)という法理を踏襲すれば、不受理申出の提出されていることを解除条件とした受理と解してよいでしょう。


Q.10 『婚姻外の子の父の氏への変更』について
 

私の夫は私と娘を捨て、乙と夫婦紛いの生活をし、3年前この乙との間に子丙(夫は認知)を子供を儲け、現在は3人で暮らしているようです。正式な妻である私とすればこれだけでも許せないのに、こともあろうに先日乙は、その子丙に夫の氏(つまり私たちの氏)を名乗らせたいと言い出しました。夫のことは諦めていますが、私の娘のことを考えればこんなことは断じて許せませんし、道義的にも許されないと思うのです。なぜ、こんな一方的なことが言えるのですか。

A

嫡出子は、当然に父母の氏を名乗るのですが、そうでない子は、母の氏を称することになっています(民法 第790条)。

そこで、父母が離婚したり、非嫡出子のように、その子にとっての父または母の氏がその子と異なる場合に、子は家庭裁判所の許可を得てもう一方の氏を称することができることになっています(第791条第1項、戸籍法第97条)。

つまり、子丙について言えば、婚姻外のあなたの父との間に生まれた子なのですから、母たる乙の氏を称しているわけです。そこで丙は、裁判所の許可を得て、父たるあなたの夫の氏(つまり、あなた方と同氏)に変更しようというわけです。

ただ身分関係では、すでに丙はあなたの夫に認知されていますし、家制度 を廃止し氏が単なる呼称としての役割しか持たない現行法上では、氏の変更だけでは身分関係はもとより親権、扶養、相続等には何らの変動も生じません。

にもかかわらず、氏の変更をしたり、反対に氏の変更を拒んだりするのには、現実的な子の利益のほか、家や氏の制度および戸籍制度に由来する日本人の捨て切れない家や血筋の概念の存在することは否めないでしょう。

民法上婚姻の際、称する氏は、夫か妻のどちらの氏でもかまわないことになっているのですが、実際にはその 98%が夫の氏を称し、よって、夫の氏を称することが望ましく思われるため、子は父の氏へ変更を申し立てます。

ところが、現行戸籍法の同氏同籍の原則から、未成年で未婚の子が父の氏へ変更すると、必然的に父が筆頭者であるところの戸籍に入籍しなければならなくなります。これを父方の嫡出家族の側からすれば、自分達の戸籍に勝手に他人(非嫡出子)が入ってくると捉えるのです。

わが国の制度上は、氏の制度と戸籍制度が一体であるため、法律上の権利義務とは無関係に戸籍の記載の比重が大きく、氏や家の旧制度を却って助長しているきらいがあります。また、家裁の審判の立場も、この氏の変更を「子の福祉・子の権利」と現行法の立法趣旨を唱えるにおいて、非嫡出子を(戸籍上)迎え入れなければならない嫡出家族の感情を無視できないという考えをうまく絡め、結局、嫡出家族偏重の許可否定を為すことが多いようです。

ですからあなた方の場合も、あなた方母娘が執拗に反対すれば、丙の申立に対し不許可の審判を導くことはできると考えます。

ただそれよりも、「感情と権利」という異質のものを同列に捉えるのではなく、身分関係の公証制度である戸籍制度と、子をはじめとするすべての人における権利としての氏の選択とを切り離して考えなければならないのが、近年唱えられている夫婦別姓制度を捉える上でも必要と感じます。


Q.11 『離婚後の氏の原則とその変更』について
 

私の旧姓は乙野でしたが、婚姻の際、夫の姓である甲野を名乗りました。その後私たちは協議離婚したのですが、離婚慰謝料は不動産を処分して支弁されるというものだったので、私が復氏すると面倒が予想されたため、婚氏届をして甲野を使用し続けてきました。

それから2年半、離婚に纏わる様々な手続きも終えて改めて姓について冷静に考えてみたとき、そもそも離婚のときは父親と同居するため、旧姓に戻るというのが約束だったのに、復氏できなかったのが災いし、現在も父との同居が実現していません。

協議離婚のときには復氏するという規定があるのを知りつつ、わざわざ届出をしてまで婚氏を選択しておきながら、今、婚姻前の姓に戻りたいというのは、事情を良く斟酌してもらっても聞き入れられないものでしょうか。

A

民法では、婚姻のとき氏を改めた者は 、協議上の離婚のときには婚姻前の氏に復する旨(第767条第1項)およびこの例外として、離婚の日から3か月以内に届出る(戸籍法第77条の2)ことによって、離婚の際称していた氏を称することができる旨(第2項)を規定しています。

つまり、協議離婚のときは原則として以前の姓に復し、 3か月以内に届け出た場合に限り婚姻中の姓を称することができるということです。

では、この3か月を徒過した後の婚氏への変更や、あなたのように婚氏を選択した後の婚姻前の氏への変更はどうなるかというと、改氏一般の規定として「やむを得ない事由によって氏を変更しようするときは、・・・家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。」という戸籍法第107条第1項の規定に依ることになります。

この一般規定に則り「やむを得ない事由」が認められてはじめて改氏できるのですが、ただ、この「やむを得ない事由」については、一般的な改氏の場合とあなたのような離婚にまつわる改氏の場合とでは、その対応を異にすべきというのが現行法での判例です(東京高裁、昭58.11.1決定ほか)。

つまり、あなたの第767条第2項の援用が、恣意的である場合や離婚後婚氏を使用していた期間が長く、改めてその呼称秩序が発生している場合、または改氏することによって第三者が不測の損害を被るなど社会生活上弊害を生む恐れのある場合を除き、「やむを得ない自由」の基準は他の場合よりやや緩和して解すべきだとしています。

このように現行法は、それまですべて一般改氏の規定の頼っていた問題を、婚氏については昭和51年の民法等の一部改正法により第767条第2項を追加して対応してきました。

そして、この頃この改正を担った法政審議会身分法小委員会は、「離婚後の婚氏の継続使用は認めるとしても、原則は復氏か婚氏か」という段で、「婚姻同氏とは共同体を表象している」あるいは「離婚したら復氏したいと思うのが国民感情である」 等の理由から原則復氏にしたといわれています。

さて、それから25年程を経た現在、国民の生活様式も変わり「氏」への意識や考え方も変わりつつあります。先の身分法小委員会でも婚姻法制全般の見直し作業が進み、両性の平等の立場から「氏」を夫婦それぞれの氏と考える夫婦別姓も検討されていると聞きますが、日本人の「家」や「平等」を捉える感性はどこまで変わってきたでしょうか。


Q.12 『無効な身分行為(婚姻)の追認』について
 

私は、現在の夫と一度は離婚したものの、子供の養育もあってその後再度同居をはじめ、その 3年後には夫との婚姻届を私が勝手に作成して届けてしまいました。

しかし、夫はそのことを知りつつ何も言わず、果ては税の申告のときには私を妻と記載し、結婚式にも夫婦として出席しており、事実上は夫婦として生活してきました。

しかし、最近夫は勝手に婚姻届を作成して届出した無効な婚姻は、当然いつまでたっても無効と言い張りますが、いかがいでしょうか。

A

わが国の現行民法は、婚姻の成立要件である婚姻意思が、実質的な婚姻意思とともに形式的な婚姻(届出)意思をも必要とし、前者が不存在の場合にはその婚姻は無効であり、後者が伴わないときには内縁関係に止まり、その後届出ることにより補完される届出成立要件説を採ります。(Q&A『婚姻届提出時の婚姻意思の存在』参照)

さて、婚姻の成立をここまで厳格に規定しているのですから、これらの規定を満たさない婚姻は当然無効であり、法律婚主義を採る以上、実定法に依らない無効な身分行為は、追認によっても有効とはならない(第119条参照)とするのが大審判以来の確定した判例でした。

ところが、その後、代諾権のない者が代諾権者としてした養子縁組(無権代理行為)について、養子が満15歳に達した後に追認(第116条参照)したことによって有効な縁組とした判例(最判、昭27.10.3)、さらに届出意思を欠く無効な協議離婚が追認によって有効となることを認めた判例(昭42.12.8)により、一定の要件の下、無効な身分行為が追認により遡及的に有効な行為へと転換されるようになりました。

確かに法文上、この「無効な婚姻の追認」を肯定する規定はないのですが、また否定する規定もなく、却って取消事由のある婚姻については追認できる規定(第745条第2項、第747条第2項)があることを考慮すると、単に規定がないからといって、事実上の夫婦にその追認を認めないというのもどうかということになります。

そもそも、身分行為が代理に親しまないうえに、戸籍窓口実務が形式審査主義であるため、せめて届書による場合には自署を要し、届書の提出行為をその意思表示として扱うことで本人の意思確認を推定しています。

とすれば、後に事実等何らかの方法で本人の意思確認ができれば、敢えてその行為無効とする理由がないのです。

手続法上、付記による代書が認められたり、いったん受理されさえすれば(付記のない)代書による届出であっても第742条但書により有効とされている判例(大判、昭11.12.4)を考えれば、無権代理行為の追認(第116条本文)の類推適用をもとに、届出意思を欠くために結果的に無効な行為(婚姻)もその追認(事実婚)があればそれにより補完され、その行為の時に遡り有効となるのが通説判例です。

つまり、届出当時、実質的な夫婦関係が存在し(必ずしもこれが要件ではない。)、かつ届出意思のなかったもう一方の当事者が婚姻届をしたことを知りつつも、それを容認する行動等があった場合には、婚姻届出の時に遡って婚姻の成立を認めても何ら差し支えないとしています(最判、昭47.7.25)。


Q.13 『特別養子縁組への転換・肯定例』について
 

ある夫婦が子供に恵まれなかったため、昭和58年児童相談所より子を引き取り、昭和61年12月家庭裁判所の許可(第798条)を得て(普通)養子縁組の届出をした。その後、昭和63年特別養子制度が施行されたことにともないその申し立てをし、一旦成立した普通養子縁組を、特別養子縁組に転換してその成立が認められたというケースがあるようですが、この適用の趣旨を教えてください。

A

いわゆる養子縁組というのは、古くは家の存続のため家名を継がせたり、労働力を得たりの手段として利用されてきました。

しかし今は、もっぱら子の利益のために機能し、養子と養親になる者との契約(養子縁組)により、養子は養親との間で法定の嫡出子の身分が取得できるというのはご承知のことと思います。

また、実親との関係では、養子になったからといって実の血族関係が消滅するというものではなく、実方との身分関係も当然存続しています。

これに対し、昭和62年の改正法によって導入された特別養子制度は、縁組の申立権者を養親のみ(第817条の2)とし、かつ、実方との関係を断ち養親を唯一の親とする縁組(第817条の9)を、家庭裁判所の後見的審判により原始的に成立させるというものです。

この特別養子縁組の考え方は、縁組当事者の私的契約を避け、裁判所や行政機関等による国家宣言行為によって成立させるとする近代諸外国の養子法の考えからくるものです。

前述したとおり近代はの養子縁組制度は、子の利益のためのみ機能しているため、親のない子、親に遺棄された子、親による養育が困難とされた子などに対する児童保護、社会扶助制度等の一環として、その社会的性格を強め、そのために当事者の私的契約を排除し、よって縁組請求者は養親のみに限定し、利益関係のない国が介在する方が望ましいと考えたのがこの立法の趣旨です。

質問の特別養子縁組の肯定例は、横浜家庭裁判所での昭和63年4月15日の審判例ですが、実親である母親は、17歳のときに見知らぬ男に姦淫されてその子を妊娠し、今もその子を養育する意志はなく、経済的にもその養育は困難であり、また、外部的にもその子の存在を秘密にしたいとの意向が強いものでした。

一方養親夫婦は(第817条の3)というと、生活面および経済面においても安定しており、子を強く望んでいたという事実(および普通養子縁組以来の実績)がありました。

以上の状況が、特別養子縁組の必要性を規定した第817条の7の「父母(この場合は実母)による養子となる者の監護が著しく困難」であり、「子の利益のため特に必要があると認めるとき(要保護要件という。)」に該当すると判断され、「普通養子縁組をした当時に、特別養子縁組制度がなく、特別養子縁組の申し立てを選択して行う余地がなかったものであることを考慮すると、普通養子縁組時にすでに第817条の2の要件を充足し、改正民法の施行後遅滞なく、特別養子縁組の申し立てがあった場合は、現在においても同上の要件を充足しているものと解するのが相当である。」という裁判所の見解により、特別養子縁組の成立を認めたという例です。


Q.14 『特別養子縁組への転換・否定例』について
 

昭和62年5月私が妻と婚姻したとき、妻には死別した前夫との子甲がいました。私はとりあえず甲を養子(普通養子縁組)としたのですが、その後妻が私との子を妊娠したので、将来甲が養子で悩むことのないようこれを長男とし、また、甲の実父についても現在は死亡していて親子関係に何ら障害はないと考え、昭和63年に施行された特別養子制度による特別養子としての申し立てをしました。ところが、この請求は敢え無く却下されてしまいました。子の利益を考えれば、何ら却下されるはずはないと考えたのですが、なぜでしょうか。

A

Q&A(13)では、いわゆる転換養子といわれる普通養子縁組から特別養子縁組への転換肯定例を紹介しました。

これに対し、質問の例は民法第817条の3第2項但書による夫婦共同縁組の例外(結果的に夫婦の子となるので立法趣旨に反さない)規定であり、いわゆる連れ子養子のケースです。

結果から言えば、この連れ子養子に関してはほとんどの場合に要保護性がなく、また実親との親族関係を終了させる必要性もないということで、否定的なのが現在の通説判例です。

つまり、第一に特別養子縁組制度としての特別な規定では、「父母による養子となる者の監護が著しく困難」または「不適当であること」「その他特別の事情がある場合」において、子の利益のために特に必要があると認めるときに、これを成立させる(第817条の7)ことになっているからです。これが要保護要件といわれるもので、まずこの保護の必要性がなければ、特別養子縁組は認められません。

現在甲は、実母と養父のあなたと暮らしており、何ら監護養育が特に困難または不適当な状態にあるとは言いがたいですから、要保護性はなく特別養子縁組の必要はないということになるのです。

特別養子制度では、普通養子のように親子関係が重畳的に併存するのではなく、実親との親族関係の終了の規定(第817条の9前段)を設けてまで実親との関係を経ち切り、子の利益を追求しようとしています。

そもそも、それまでの普通養子縁組の規定ではカバーできない形態の養子縁組を、子の利益にのみ着目し、要保護性等の観点から特別に成立させようとしているのですから、普通養子縁組で対応できるケースにまで特別養子縁組の適用範囲を広げると、却って子の利益を阻害し、結局立法の趣旨に反することになってしまいます。

ですから、連れ子縁組の場合の申し立てもそのほとんどが質問のようなケースなのですが、いずれも要保護要件を欠くとして却下された事例が多く(大阪高決、昭63.11.19、名古屋高決、昭63.12.9等)、特別養子制度によることが適切とは認めがたかったようです。

一方裁判所側からとしても、特別養子縁組制度を適用して成立させたものの、その後万が一離縁することにでもなったら、普通養子縁組に比べれば大変なことになるのです。

たしかに実父実母等との親族関係の終了に関しては、一定の要件の下回復の規定(第817条の10、11)もありますが、その要件の厳格さに比し、またせっかくの規定であるのにもかかわらず、予期せぬ離縁によっていたずらに複雑な法律関係を生んでしまう虞もあり、審判もむやみに特別養子縁組を成立されられず、慎重にならざるを得ないという実務面もあるといえます。


Q.15 『夫婦別姓制度』について
 

最近夫婦別姓(べっせい)制度という言葉をよく耳にしますが、どのような制度でしょうか。

A

そもそもわが国の現行民法は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称するように定めています(第750条)。

決して「夫婦は、夫の氏を称する」とは定めていません。憲法の両性の本質的平等の理念に基づき、夫でも妻でもどちらでも好きな方の氏にしていいことになっているのです。まさしく平等だと思うのですが、実際には社会の風潮や当事者以外の力が働き、その98%もが夫の氏を称しています。そこで、「どちらでも良いという規定は、どちらかにしなければならないということで、結局他の一方は氏の変更を強制されることになる。」とか「どちらかにしなければ結婚できないというしくみそのものがおかしい。」「形式的に両性の平等が規定されていても、実質的には平等ではないのではないか。」という批判が生まれてきたわけです。

これを、立法によって本質的な平等を実践しようとするのが夫婦別姓制度です。このほど身分法小委員会でも、再婚禁止期間の短縮やこの別姓制度についてはかなり議論され、法改正に傾いているようです。

旧法時代にはまず戸主がいて、その戸籍に入ってくる者(つまり妻)が氏を変えて入籍する仕組みになっていました。家とその氏を継承するために女性を迎え、男子のいない家では婿(養子)をとって後継ぎとしたわけです。あくまでも「家」が中心であり、その長が家長であり、戸籍上の「戸主」(夫婦の単位の戸籍ではなかったので、隠居するまでは戸主)」だったわけです。

新憲法が「家」を捨て、基本的に人権を建前に「個人」を尊重しても、長年培われてきた日本文化はすぐには変わりません。国家が国民を管理するために開発した「戸籍制度」は、その後国民も家柄・血筋の公証制度として大いに役立ててきたわけです。

さて、この「氏制度」と「戸籍制度」がオーバーラップしている点に、別姓制導入のひとつのネックがあります。

現在の「氏」が家のものか個人のものかを考えれば、前述したとおり家の公称の意義は消えたはずです。ですから法律上でだけ考えれば、たぶん「別姓」に反対する然したる理由はなくなります。あるとすればその実施の方法だけでしょう。別姓にした場合に、戸籍は個人単位にするのか、子供はどちらの姓にするのか、また実施の時期についてはどうか、既存の制度との選択制で良いのか等です。

それよりも問題は、国民の「氏」や「名前」それに「戸籍」に対しての感情(思い入れ)への配慮なのです。

最近日本を代表する数行の銀行が合併しました。ネイムバリュウというものがあるので簡単に名前(商号)は変えられず、当初は日本名ではそれらの銀行の名前を羅列し、英語名のときはそれを逆さに並び換えるなどして対処していました。また、ラジオのある女性アナウンサーは、顔が見えない分名前が浸透するのに10年かかったそうですし、女性の社会進出が著しい現在では、トップセールスウーマンだってなるべくなら「氏」を変えたくはないでしょう。

それまで苦労して覚えてもらったり、生活に溶け込んでいる名前の意義を考えると、少なくても選択制で夫婦の別姓制度を取り入れなければならない時期にきているのかもしれません。


Q.16 『事件屋との対抗』について
 

Aさんは2年前倒産し数千万円の不渡り手形を出しました。そしてなんとか任意整理によって話をつけ、ようやく仕事の方も少しずつ良くなって来ました。ところが最近、ヤクザ風の男2人が、前の不渡り手形300万円を持って来てすごんでいます。

Aさんは手形の支払い義務のあることは知っているのですが、まだ立ち直り切っていないこと、その手形はタダ同様で入手した様子から直接迷惑をかけた人に払いたいと思っている。

A

法的には、特別な理由がない限り支払義務はあります。

しかし、その支払が脅迫的態度であれば警察に届けること。債権があっても脅迫罪が成立するのは判例の立場です。

手形の支払という民事訴訟で来るのは自由ですが脅迫という刑事事件をからませ示談にする方法もあります。

また、脅迫による損害賠償を反対債務として、手形債権と相殺して債務不存在確認の訴をAさんの方から起こす方法もあります。

最終的にAさんは負けるかもしれませんが、訴訟中支払を延すことも可能です。

そして、最終に、相手がはたして本当に手形を所持しているか、正当な手段で手に入れたかを調べることによって、案外相手が不正なことも判明します。


HOMEへ戻る

 

入江宏幸行政書士事務所
Copyright (C) 2001 Hiroyuki Irie Public Notary Office All rights reserved. Base template by WEB MAGIC.